染色整理仕上機械など産業機械の設計・製造・販売
花山工業株式会社
合成繊維の業界動向(2024年)
今回は2024年の化学繊維(主に合繊)に関する内外の業界動向についてお話します。コロナ禍が収束すると共に賃金上昇の機運も高まりようやく景気回復が期待されましたが、原材料や物流費の高騰等により物価高となり個人消費は弱含みの状況です。下記に示すように国内繊維需要は低調に推移。そんな中、円安の影響もあり織物のみ輸出を伸ばしましたが不安要素もみられます。
国内市況概要(2024年)
衣料品関連
インバウンド効果も寄与して百貨店の衣類販売は前年比6.2%伸びたが、量販店の衣類販売は3年ぶりにマイナス成長となった。

家庭・インテリア関連
コロナ禍以降減少傾向だったマスクや除菌シート等の需要は堅調に推移。
インテリア需要は新規住宅着工が減少したことで需要が低迷。おむつ関連も乳児用の減少と輸出の減少が継続した。

産業資材関連
2024年の自動車生産が前年比8.5%減となった事で車輛用繊維品の需要は低調に推移。
建築土木資材関連は公共事業需要に支えられ底堅く推移。

繊維品輸出
ドルベースで78.5億ドル(前年比6.6%増)、円ベース1兆1890億(9.2%増)と共に増加。数量ベースでも9.2%増。
形態別では織物が2,993億円(8.2%増)と金額、伸率共にトップ。
仕向地別ではアセアン地区が20%伸び、シェアは全体の25%(2,967億円)になると共に、欧州も1,677億円と大幅増(25%)を記録した。

線維品輸入
ドルベースで325.8億ドル(前年比4.5%減)、円ベースで4兆9,229億円(2.6%増)。
形態別では二次製品他が4兆5334億円で衣類は3.6%増。仕出地別では中国がシェア50%(0.6%減)、ベトナムが8.5%増と急伸。
(引用;日本化学繊維協会資料25.4.3)

繊維需要関連の各種指標 
(前年比増減:%)
百貨店 衣料品売上 量販店衣料品売上 自動車生産 新規住宅着工
2020年 -31.1 -16.9 -16.7 -9.9
2021年 3.5 -1.9 5.0 5.0
2022年 14.2 4.0 0.4 0.4
2023年 10.1 0.9 -4.6 -4.6
2024年 6.2 -5.4 -8.5 -3.4

(引用;日本化学繊維協会資料25.4.3)

繊維工業の段階別生産指数(2024年) 
 (2020=100)
繊維工業全体 繊 維 織 物 染色整理 繊維粗製品
第1四半期  98.2  83.9  101.9  94.7  81.0
第2四半期  94.0  93.9  105.5  98.6  84.3
第3四半期  94.2  94.9  109.3  96.2  84.2
第4四半期  93.2  90.5  112.9  97.2  79.9


合繊(PET, Nylon, Acryl)生産量推移 
(単位:千ton)
2022年 2023年 2024年
日本 585 512 467
韓国 1,020 871 718
台湾 1,062 850 848
中国 58,096 61,940 67,470

 (引用:日本化学繊維協会 プレスリリース。2025.4.3.)

・国内の合繊生産量は年々減少傾向で、2024年は前年比8.7%減、2022年比20%減。
・韓国、台湾も同様に減少傾向で、2022年比で韓国31%減、台湾20%減の状況。
・中国は増産を継続中で、2024年は前年比9%増の6,700万トン。これは日本の約150倍であり汎用品では全く競争できない状況です。また中国では繊維リサイクルも進んでいると報道されておりこれらも脅威となります。

今後必要な姿勢


海外生産品は価格だけでなく品質向上やリサイクル対策にも積極的に取り組んでおり、国内産地は今後どのような活路を見いだして成長続けるか問われています。中でも心配な事は技術者の高齢化と人材不足。これまで培われた基礎的な技術力や品質に拘る強いマインドを継承しつつ、自動化や省力化を進め環境問題やサスティナビリティ対応に取り組んでいかねばなりません。そのためにはこれまでのライバル企業とも共創相手として連携し、協力して国際競争に立ち向かっていく事も必要かと考えます。欧米を中心に業界を取り巻く環境はめまぐるしく変化しており予断を許さない状況です。