染色整理仕上機械など産業機械の設計・製造・販売
花山工業株式会社
繊維業界のユニコーン企業
ユニコーン企業のケミカル&マテリアル分野で繊維関連企業が上位に位置していることから、これら企業の概要と現状をレポートします。

ユニコーン企業とは一般的に「企業価値10億ドル超の非上場企業」を指します。
JMTC(日本材料技研)の調査によると、1位、3位、6位に繊維関連企業が名を連ねており、繊維業界はまだまだビジネスチャンスが多い分野と思われます。
企業ランキング(ケミカル&マテリアル部門)
順位 社名 事業内容 企業価値(億円)
1 Spiber 構造タンパク質素材(クモの糸) 1,695
2 TBM 炭酸カルシウム/樹脂複合素材 1,365
3 JEPLAN PET樹脂ケミカルリサイクル 383
4 Kyulux 次世代有機EL材料 296
5 つばめBHB アンモニア生産システム 171
6 Bioworks バイオマス素材(ポリ乳酸繊維) 143
(JMTC調査結果 2025)
Spiber

1位のSpiber(スパイバー、本社山形県鶴岡市)は、世界初の人工合成による構造タンパク質素材「Brewed Protein™️(ブリュード・プロテイン™️)」の量産化に成功したことで有名な企業である。この素材は、言わば人工のクモ(spider)の糸である。
2007年に慶応義塾大学出身の関山和秀氏らが神奈川県藤沢市で設立し、翌年慶応義塾大学先端生命科学研究所のある山形県鶴岡市に移転した。この繊維は原料に植物性のバイオマスを使用し生産に発酵法を使用するため、大量の熱エネルギーを使う石油由来の合成繊維やプラスチックに比べると著しく環境負荷が小さい。そのため次世代の本命サステナブル素材として注目を集め、世界の先頭を走るスパイバーは大規模な資金調達に成功してきた。アパレルメーカーのゴールドウイン(富山)や商社の兼松など日本企業の協力も行われており、既にゴールドウインはこの繊維を使ったブルゾン等を市販中である。タイの原料工場に続き現在は米国で中間原料の量産計画が進行中である。
JEPLAN
3位のJEPLAN(旧:日本環境設計)は、独自のPETケミカルリサイクル技術を用いてPETボトルやポリエステル繊維など使用済みのPET製品を分子レベルまで分解し、再びPET ボトルやポリエステル繊維に戻す技術を持つ。企業価値10億ドルには達しないが、使用原材料や使用済み製品のリサイクルをめざす各分野大手企業との連携が活発に行われている。
Bioworks

6位のBioworks(2015年創業)は、ポリ乳酸の研究開発で蓄積した技術をもとに2021年より繊維事業への展開を開始している。植物由来の次世代合繊繊維「PLAX(プラックス)」は、ファッション業界における石油由来原料からの脱却の一翼を担う素材として、国内外の 繊維企業やブランドから注目を集めると共に採用が増えている。課題であった繊維特性の品質向上も進んでおり今後の飛躍が期待される。
今後に期待される次世代繊維
上記次世代繊維以外に国内企業が積極的に世界展開している樹脂として、POM(ポリアセタール樹脂及び繊維)も脚光を浴びています。こちらも原料・メタノールが二酸化炭素から合成 できる事に着目し「空気から作る糸」として有望視されています。
今回紹介の企業に共通している点は、バイオ技術を駆使して開発していることです。非石油由来の原料を使用し環境に優しい製法で生産されるためグローバル展開が期待できます。
また、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、バイオモノづくり革命推進事業の新たな研究開発テーマとして「繊維to繊維の資源循環構築の実現に向けた研究開発・実証」など5件を採択。詳細はまだ公開されていないが、帝人フロンティアや東レなど大手繊維メーカーが参画予定と報道されています。バイオ技術の活用で国内繊維産業が更に飛躍する事を期待します。