染色整理仕上機械など産業機械の設計・製造・販売
花山工業株式会社
無水系染色の動向
今年6月、超臨界染色の研究開発が新エネルギー・産業技術総合機構(NEDO)の「エネルギー・環境新技術先導新研究プログラム」に採択と発表されました。既にアジア諸国ではポリエステルニットを主体とした超臨界染色が行われていますが、このプロジェクトでは精練・染色・機能加工の加工プロセス全てを無水化する世界初の技術確立を目指すと報道されています。一方、海外では超臨界染色以外にも無水染色システムが。そこで最近報道されている内容から3つのシステムについて紹介します。
超臨界染色システム
二酸化炭素を使い超臨界状態で合繊を染色する処方。水を一切使用せず、助剤も不要である。染色後の排水は発生せず乾燥も不要である。使用する二酸化炭素は再利用できる等、非常に環境に適した加工である。反面、国内では装置が高価、形態はビーム式、染料が限定される、精練や機能加工技術が確立されていない、法整備が不十分といった課題も多い。現在超臨界染色が実用化されているのは、タイ、台湾、インドネシア、ベトナムであり、中国や韓国でも本格稼働がまもなく開始とのこと。しかしどの地域でも行われているのは合繊のみで、精練工程から仕上げ工程まで、一貫した加工は行われていないといわれている。国内のプロジェクトにおいて前工程、仕上げ工程の技術開発が進み、日本発の超臨界加工技術が世界に広まることを期待する。
欧州発の無水連続染色システム

 (無水染色装置 Endeavour)

Alchemie Technology社(英国)が無水染色システム「Endeavour」を発表している。 詳細は不明だが、布帛の片面・両面に染料・薬剤を塗工するシステムで、ポリエステル、ポリアミド、木綿、羊毛、複合品など多種の素材に対応可能とのこと。既存ラインへの取り付けが可能であると共に既存染料が使用可能で、液交換も数分で可能と紹介されている。この処方により劇的にカーボンフットプリント量を削減し、従来の染色技術と比較して、エネルギーコストを最大85%削減、トータルコスト50%超削減可能と報道されている。下の写真は台湾大手繊維企業に設置された同装置である。(引用: Alchemie Technology社HP)
中国発の無水染色システム
Kingfull Machine Co.,Ltd(広州省)が開発した無水染色装置は、特殊な助剤と染料、そして数%の水を含んだ糊状の染浴を使用し、パッドードライーキュア(190℃)方式で染色するシステムである。最終的に助剤は分解し、染料は完全に内部拡散が行われるため、乾燥後の洗浄は不要と報告されている。 ただし対象素材はポリエステルのみで、特定の染料を使用と紹介されている。(引用:Dreamatex Vol.7 2022 )
繊維産業の重要課題「環境対策」

 (原着糸)

繊維産業は世界のCO2排出量の3%を占め、世界の水質汚染の20%以上を引き起こしていると言われています。 世界繊維品輸出の約70%を占めるアジア諸国にとって環境対策は急を要する課題です。 上記で紹介したシステム以外にも、IJプリントや昇華転写プリント、原着糸の活用など無水染色の動きは加速。成長産業であるテキスタイル業界を前進させるには、環境対策は避けて通れない問題です。我が国の繊維技術が大いに発揮される事を切望します。