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花山工業株式会社
有機フッ素化合物PFOS、PFOAの問題
特定の有機フッ素化合物は化学的に安定であるため環境中に残留し易く、生物蓄積性、長距離移動性があり、毒性等も認められていることから環境汚染物質に指定されています。有機フッ素化合物は数千~1万種以上存在するといわれていますが、今回は最近話題となっているPFOS、PFOAの問題について簡単に紹介します。最近の調査では、河川や浄水場から基準値を超える濃度が検出されると共に、血中濃度が高い人が増えているとの報告もされているのです。
PFOS、PFOAとは
次のような構造の有機フッ素化合物である。
◆PFOS=Perfluorooctanesulfonic acid (パーフルオロオクタンスルホン酸)
   化学式:C8HF17O3S (POPs条約の付属書記載物質、第1種特定化学物質)

◆PFOA=Perfluoro octanoic acid (パーフルオロオクタン酸)
   化学式:C8HF15O2 (POPs条約の付属書記載物質、第1種特定化学物質)

どこで使用されているか、またどこから流出するか。(一例)
・PFOS等は消火器用薬剤に微量含有されているため、消火器使用後に流出。
・PFOA等はフッ素系撥水撥油剤に微量含有されると共に使用後に分解されて発生。
 フッ素系撥水撥油剤は食品包材用の紙(ハンバーガー等)や繊維、皮革等の機能加工に使用されている。
・その他(半導体の製造工程段階で有機フッ素系化合物が使用される)
国内各業界・政府の動向
・(一社)日本消火器工業会では、POPs条約でPFOsが使用禁止物質になったことを受け、PFOsを含有する消火器は2010年以降製造・販売を中止いている。しかし旧式の消火器はまだ多く設置されていると共に、過去に使用された廃水中に含有されていた成分が河川や地中に蓄積されている危険性がある。
・食品業界では、ハンバーガーの包装材に使用されていた有機フッ素系撥水撥油剤の代替を進めている。特に米国では法制化が進んでおり、米国マクドナルド社は2021年より全ての包装材に有機フッ素化合物の使用を禁止した。
・繊維業界では、PFOAが発生すると思われるフッ素系撥水剤(俗称C8タイプ)の使用及び加工品の輸入を禁止している。現在はより安全性が高い俗称C6タイプにシフトしているが、欧米ではこれらも禁止する動きがでており、非フッ素化の動きが加速しそうである。
・欧米の半導体業界は、半導体の生産に不可欠な有機フッ素化合物の規制を2025年から始める計画であることを発表している。

規制の動向
・2023年2月に水質汚濁防止法、施行例の一部が改正され、PFOS, PFOAが指定物質に追加された。指定物質(法第2条第4項)とは公共用水域に多量に排出されることにより、人の健康被害若しくは生活環境に係る被害を生ずる恐れがある物資として政令で定めるものである。
・POPs条約では昨年、PFOS, PFOAに続きPFHXSの使用禁止を決定した。
・繊維業界のグローバル認証機関では、昨年から規制物質リストにフッ素系撥水剤を追加する動きが出ている。
・米国3M社は2025年までに有機フッ素化合物の生産・販売を全廃すると発表。
 
有機フッ素化合物の今後

沈砂池(本文の内容と直接関係はありません)

多方面で生活の向上に大いに貢献してきた有機フッ素化合物が大きな岐路に立たされています。今年2月、米国の医大研究チームは、有機フッ素化合部の血中濃度の高い人は、新型コロナウイルス感染後の抗体価が低い傾向にあるとの分析結果をまとめました。高機能性を有する有機フッ素系化合物をすぐには代替えできない用途も沢山ありますが、我々の健康と安全を守るためには一歩ずつでも削減していく努力が必要と考えます。